治療の一例

The Saegusa Dentistry
~わたくしの診療に対する考え方~

2019年10月20日著

 1987年に歯科医師免許を頂戴してから【考える歯科治療】の実践を・心がけてきました。
その間、大いに苦慮もし、それでいて・大いに楽しんでもきました。
象牙質との接着と・歯質の保全に挑んだ20代。
歯周病との闘いであった30代。
補綴物の適合性の追求に明け暮れた40代。
またインプラント治療の検討については、20代半ばからという【長い旅路】でもありました。
40代半ばから現在に至っては【咬合と摂食・嚥下】という大きなテーマとの戦いの最中でもあります。
すなわち私の臨床は、このように各年代ごとにテーマを決めて、研究や検討を加えながら結論を導いてきたものです。その結果検証の基、私の歯科臨床が形成されてきたように思います。

 2009年からは、母校であります日本歯科大学に学ぶ学生諸君に対しての講義を現在まで担当させて頂いています。
【プロフェッション】というカリキュラムで、これから近い将来、歯科医師となられ、全国各地の歯科の現場の最前線で臨床を担う歯科医学生に対して、その重い職責の自覚を促す目的で組まれたプログラムです。
講義は、私の日常の普遍的な歯科治療を基に構成されています。ですから予知性の不確かな比較的新しい治療は、講義からは割愛しています。あくまでも【私のスタンダード】な歯科治療を基に、講義は構成されています。
私の患者さんへの歯科治療を、写真を織り交ぜながら、私の診査、診断から、私が【どう・考えたのか】そして【どのように・手当て】したのかを、余すところなく提示させて頂いています。

 また2018年、母校の附属病院・総合診療科に臨床教授として配属されました。私の診療所と附属病院での診療は、環境も大きく異なります。しかし歯科医学に課された使命は、所が異なっても同じであることを改めて実感できる機会となりました。
ご提示させて頂いている症例は、既に10年以上の経過を辿ったものを選択しています。これから歯科医学に携わる歯科医学生諸君、後進の歯科医師たちが、何かを感じ取って頂ければ幸いです。

 2006年10月9日初診の26歳の女性です。主訴は【汚い前歯が恥ずかしい】で、幸福を願う乙女心を切に訴える表情を、今でも鮮明に記憶しています。

2006年10月9日初診の26歳の女性

歯並びは、比較的綺麗ですね。
しかし、上の6本の前歯は、決して綺麗とは・言えません。
なぜでしょう? 1本ずつの歯の至るところに【コンポジット・レジン充填処置】が施されています。
材料の劣化による変色が、彼女の悲しみの原因ではありません。
充填操作の粗雑さと・形態付与の不備が、歯の2次的な・う蝕を発現させたことが原因なのです。
また、材料の疲労具合からコンポジット・レジン充填処置の際に必須操作である【ラバーダム防湿法】が施されていないことが判ります。
充填材料を歯質に接着する際には、呼気や唾液からのモイスチャー・コントロールが修復治療の【見栄え】の持続性に大きく影響を与えます。
また、恐らく【う蝕検知液】の使用もなかったのでしょう。なぜなら修復材の下に多量の・う蝕が認められるからです。
全てのコンポジット・レジン材料を外すと、これらの歯は、ネズミに食い荒らされたチーズのようになって原形を留めず、また歯の硬さゆえに、容易に折れるに違いありません。
歯磨きも丁寧に行ってくださるように、私たちは【情熱のブラッシング指導】を、治療の度に・継続的に行います。
そのような患者さんとの関わりから、1本1本の歯の現状が、徐々に【診えて】くるのです。一見には綺麗な歯並びのように見えた6本の上の前歯群。歯肉が不揃いで、個々の歯の捻れも鮮明に【診えて】きました。

プロビジョナル・レストレーション(仮歯)による修復

上の前歯と両脇の小臼歯に仮歯を装着しました。
一見、綺麗に見えますね。
この時期には、患者さんは、本当に上手に・ブラッシングできるようになります。
で、患者さん自身も細かな異常箇所に【気づく】ようになります。いわゆるデンタルIQが向上される訳です。具体的には、個々の歯の並びの不調和とか、歯の微妙な長さの違い、そして向きの違いなどです。
 歯にクラウン修復する際には、私たち歯科医師が守らなければならない【原理・原則】があります。そのなかでもクラウン修復が、長期的に歯肉と健康な状態で共存するための【バイオロジック・ウィドゥス】の獲得は、最低限のルールです。
このルールが守られていないクラウン修復は、黒ずんだ不健康な歯肉の原因となり、ひいてはクラウン修復の永続性は儚い夢となるでしょう。

歯周外科処置

【バイオロジック・ウィズス】獲得のための歯周外科処置です。
様々な手術方法がありますが、この選択判断は高度な知識と経験が必要です。

外科後の歯肉の熟成期

手術後3ヶ月経過の所見です。
歯肉は健康に熟成し、以前の歯肉の上に被せた仮歯との間に、大きく歯根が露出して見えます。
私のイメージする最終修復形態と・初診時での【ズレ】が鮮明に、具体的に視覚的に確認できるのが、この時期です。

支台歯形成と歯肉圧排 支台歯形成と歯肉圧排

仮歯を外して、歯と歯茎の間の隙間に細~い糸を挿入します。この操作を【歯肉圧排】と言います。
歯肉圧排により、歯科医師の【医療行為から生じる様々なダメージ】から・歯と歯周組織の【付着を守る】のです。クラウン修復治療の必須手順です。
その後、クラウン修復治療に適した形態に歯を形成します。

旧修復物と熟成された歯周組織との差異

歯周組織への配慮を十分に行った環境を整備した歯の形成形態と、最初の仮歯とのギャップに注目してください。
初診の際に・クラウンを被せたところほど、歯肉に炎症が多いように感じるのは、正にこの辺りに原因の一端があるようですね。

筆者が好んで使用する咬合器の数々 診断用ワックスアップの実際 診断用ワックスアップの実際

私は歯を削って直ぐに歯型を採って、最終クラウンを製作することを謹んでいます。
精密に造った仮歯に・とても重きを置いています。
出合って直ぐに結婚を決める人って居るんでしょうか?ビビッと!という方も居られるでしょうが、通常は、ジックリと様子を観てっていうのが安全?であるように、歯の治療においても、私は完成形に近い状態での仮歯を製作して、それを先ずは口腔で実際に使ってもらって、問題点を見つけてゆくんです。その上で、露見した問題点を解決しながら・治療方法を絞ってゆくという方法ですかね。
この症例においても2回目の仮歯の製作に取り掛かりました。
咬合器という顎運動を精密に再現する器具を使って、先ずはワックス、いわゆる蝋ですね。
ワックスで歯の彫刻をします。そのワックスで出来たクラウンを更に歯型を採って、其処に樹脂を流し込み、高圧下で重合硬化させて仮歯は完成します。

プロビジョナル・レストレーション(仮歯)の製作の一過程 プロビジョナル・レストレーション(仮歯)の製作の一過程

小さな小さな歯。でも、色んな【工夫】が必要です。
女性の患者さんです。お裁縫をされる機会もあるでしょう。お子さんの運動会の際のゼッケン付けなどは、親子共々の大きな思い出になるに違いありません。
【青マーク】の処は、上下の前歯が擦れ合って・糸が切り易いようにという配慮からの、私の【仕掛け】をご披露させて頂いています。

2回目の仮歯を装着した所見

先ほどの手順にて製作した・2回目の仮歯を装着した所見です。
この時期には、歯と歯の間には【隙間】が見えるでしょう?
この辺を・記憶に留めて置いて下さい。後々に・歯肉は【生きている】ことを実感して頂けると思います。

印象採得 印象採得

歯型採りです。
削った歯が黒ずんで見えますね?
この私の手当ての仕組みについては、3年生の歯科保存学の講義の際に解説させて頂きます。
全て生きている歯です。神経は全く除去していません。
仮歯を外していますが、麻酔注射していません。でも患者さんは、痛くありません。
歯科医学の中の1分野である歯科保存学。この歯科保存学は歯科医学の根幹とも言えるでしょう。歯科保存学的見地に立った歯科治療の実践は、目新しい最新の治療法に翻弄されるより確実な結果を生むでしょう。
基礎的な学問を確実に取得した上で、視野を広げるのが正しい医療人の姿だと思います。

フェイスボー・トランスファー

フェイスボウ・トランスファーという手順です。
頭蓋骨に対する上顎の位置関係を記録しています。
この操作は歯科補綴学の基本的手順です。
歯科医学生は必ず教育を受ける基礎的手順です。
私は既に初老に差し掛かっていますが、青年期から現在に至るまで、決められた手順は、決して自己都合にて省かずに、治療の各ステップ・ステップを確実に積み上げてゆく手法を守ってきました。
教科書で書かれている治療方法は、最低限度の基本ですから、どうして私が省略できるでしょうか?

筆者が好んで採用する副歯型法

この症例は今から22年前の治療です。
オールセラミック・クラウンについて私は、未だ未だ・疑いの眼で観ていた時代です。
私の中での【長期経過症例】もありませんでしたし、修復材料の【癖】も、手に馴染んでいませんでした。理論的にも完全にスッキリとは消化できていない段階だったのです。
ですから伝統的なメタル・セラミッククラウンにて修復治療を行いました。
歯を削った境い目を【マージン】と呼びます。このマージン部のピッタリ度が、修復治療の勝負処です。
適合がアマイと、マージン部にプラークが付着して、う蝕、歯周病の原因に・確実になるからです。
私は金属で鋳造したクラウンのフレーム造りは、歯型を1本1本バラバラにして使用します。副歯型法という古典的手法です。この手法は現在のオールセラミック・クラウン修復に際しても、変わらず採用しています。
【古くからある確かな製法】を軽んじる心は、治療成功の妨げになると考えています。

筆者が好んで採用するピックアップ印象法

丁寧に造られ、精密に適合する金属製のフレームを個々の歯にフィットさせて、その上から全体を包み込むように歯型を採ります。
この作業のあと、セラミックの盛り上げ、焼き上げを行い、メタル・セラミッククラウンは完成します。

現在のメタルセラミック修復

私たちの仕事は、人工物と生体の調和を、如何に・良好な状態で・長期間維持するか・が勝負です。
そのためには日々の診療を丁寧に観察することから・全てが始まると思います。
写真は最近のものですが、歯と歯の間の隙間も見えませんよね。
クラウンの形態で無理矢理に隙間を埋める行為は、逆に生体への暴挙であると、私は考えています。
生体のルールを守ることが医療の第一歩であると・思いませんか?

支台歯形成の具体例

歯を削るって・本当は嫌ですよね!
でも、致し方なく、それしか方法がない時に、私は歯を削ります。
ですから、本当に気合いが入りますし、様々な工夫や配慮を行います。
上の2本の前歯のオールセラミック・クラウン修復の際に撮影した写真です。
歯肉に近い高さまで、基本的形態に形成します。

歯肉圧排

歯と歯肉の間に、細~い絹糸を挿入します。
先ほどの【歯肉圧排】ですね。
なぜっ?
【バイオロジック・ウィズス】という言葉が浮かんだら合格ですよ。

マージン部の仕上げ

歯周組織と歯の付着を壊さないように、スムーズな平滑な形成ラインができるように、マイクロスコープ視野で、強拡大で仕上げてゆきます。

マージン部の最終仕上げ

クラウンと削った歯の境い目【マージン部分】が、ツルツルに仕上がるように、【かんな】をかけます。もう・ここまでくれば大工さんでしょっ?

完成した製作模型と筆者の支台歯形態

オールセラミック・クラウン製作のための模型です。

完成したオールセラミッククラウン修復

完成したオールセラミック・クラウン。
製作する歯科技工士さんとの【真剣勝負】みたいな処が・あるんですよ。
どうだ・どうだ!と、プロとプロの掛け合いみたいなモノかも・しれません。

同修復の口腔内所見

もうもう20年も経過しちゃいました。

ホワイトニングを希望して来院した30歳前半の女性

歯科医師って、人と関わる仕事ですから、人が好きでないと勤まりませんね。
それも、歯の病を持った人が相手なんだと・自覚しながら接する。
案外、コレって当たり前なんですが、ついつい歯の病って・実感してる歯科医師って、少ないかもしれません。
この患者さん。30歳前半の女性でした。主訴はホワイトニング希望でした。
でも、私には、どうしてもホワイトニングをすることが出来ませんでした。
毎週1度の割り合いでお越し頂いて、半年近くブラッシングのトレーニングしたり、雑談したりで。
何故って?臨床家としての私の心に引っ掛かる・何かを・彼女との会話から感じていたからです。
で、遂に私は勝負に出たんです。
お仕事、お医者さんですよね?
彼女、判りました?
えぇ・途中から。
そんな・そんな・出だしから始まって、
先生、ホワイトニングしても、先生の悩みは解決しませんよと・申し上げたのです。
先生の歯へのコンプレックスは並外れていました。
会話の途中から、彼女の頬に涙が流れていました。
私の患者さん。多くの方が、私の前で涙を流されます。
そんな時・私は、お役にたちたいと、身体の中が熱くなります。

歯列矯正処置(兵庫県川西市 畑豊歯科医師による)

兵庫県川西市の畑豊歯科医師に歯列矯正治療を依頼しました。

動的治療終了時

歯列矯正治療は意義ある治療です。歯の位置を変えられるからです。
しかし歯列矯正治療では、歯の形は変えられません。
ここに私たち修復歯科医師の存在価値が在ります。

全歯オールセラミッククラウン修復22年経過例

この患者さんは、私の内科の主治医となりました。
治療が終って22年の先生の口腔です。
新しいカメラを購入したので、テスト撮影させて頂いたのです。
全てオールセラミック・クラウン修復です。
人と人の関わり合いって、オモシロい・ですね。

咀嚼障害と審美障害を主訴に来院した40代男性

 インプラント治療については、私の中では既に・解決しています。
歯を失った部分には全てインプラントが最適っていう答えは、私には・ありませんね。
歯の欠損部分の治療方法としては、ブリッジ、部分入れ歯、総入れ歯、インプラントって・選択肢があります。
歯科医師である私にとって、それぞれの治療方法は・謂わば私の子供みたいなモノです。
どの子が可愛いい、どの子が1番優れているなんて・ありません。修復方法には適応症ってモノが・確実に在ると思っています。
インプラントの優れた長所、欠点を、患者さんの欠損だけを見ないで、全身状態から骨格、歯周組織から顎骨の質のみならずタワミなど、噛み合わせは勿論のこと、歯列全体を総合的に考慮して、どうしてもインプラントでなければ・問題解決にならないという症例にのみ、私はインプラント治療を選択しています。
しかしながら、インプラント治療の患者さんが減少する傾向はありません。
この患者さん、初診の際の所見です。ほぼ全ての歯を歯科医師が治療を施しています。
でも、噛めないんだそうです。私と同じ歳の病院経営者でした。
歯科治療とは、歯を人工物を使って・被せることが最終手段ではありません。
プラーク・コントロールしやすい口腔環境の整備と、正しい咀嚼機能が営めるようにと・努めるのが歯科医師の使命です。
で、この歯科医師の仕事の結末はどうでしょう?
本来、歯科医学は人類に貢献すべきものですが、このような口腔状況に遭遇する度に悲しくなるのです。

インプラント埋入手術の実際

この患者さんには一部、インプラント治療を選択しました。
インプラントは【万能の神】ではありません。
歯根膜を持たないこと、スクリューの材料劣化が応力によって生じることを念頭において選択すべき治療です。
外科処置も必須です。親知らずの抜歯を口腔外科医に依頼する程度の技量の歯科医師は、インプラント手術は慎むべきです。
インプラントの埋入手術に際しては、様々な危険性があります。
骨は46度以上の熱を1分間以上・持続すると壊死します。
60度以上の熱なら・一瞬で壊死を生じます。
骨のドリリング時に生じる・ドリルと骨の摩擦熱からの発熱を防止するための【工夫】が、 とても大切です。壊死した骨にはインプラントは結合しませんから。
また繊細なドリリング作業は、骨の骨折を防止します。
当然のことながら外科手術ですから、血管や神経の損傷の危険性もあります。
術前の精密な診査と・手術設計を念頭に、繊細な手術に徹しなければなりません。

矯正治療開始(兵庫県川西市 畑豊歯科医師による)

上の前歯部分にインプラント治療を行い、仮歯を入れて、全顎的な歯列矯正治療を、この症例も兵庫県川西市の畑豊歯科医師に依頼しました。

動的治療終了後プロビジョナルレストレーション(仮歯)による咬合の再構築時

矯正治療終了後に、全顎的な仮歯による修復治療を行いました。
補綴治療のゴールを私は定めています。【顎の関節が正常な状態で維持できる】ことです。
そのためには、正常な咀嚼運動パターンを具備しなけれしなければなりません。
そのためには、正常なる歯列形態が必要であり、加えて奥歯部分に確たる支えが要るのです。
前歯の傾斜角、奥歯の形、こだわればキリが・ありません。ここに歯科医学の大きな魅力があります。

最終修復直前_上顎左右犬歯のみメタルプロビジョナル

上の左右の犬歯以外は、セラミック・クラウン修復を完成しました。
上の左右の犬歯は、内側にゴールドを貼り付けた最終の仮歯のままです。
意識下の咀嚼機能、無意識下の食い縛り、歯軋り、序でに嚥下機能など、
様々な局面において上下の歯は接触します。その微調整の【最後の砦】が犬歯であると・私は考えています。
この症例は悩みに・悩みました。樹脂製の仮歯であれば柔らか過ぎますので、金属のなかでも安定した性質で、柔らかいゴールドを使って・試す時期を設けました。
下の犬歯が擦れている部分だけが【光って】ご覧いただけるかと・思います。
その経路から、考えて、犬歯の形態を決める訳です。

術後12年経過

私の【考える歯科治療】の結論です。
12年経過しての所見です。

筆者の支台歯形成仮歯とマージン・歯周組織との関係

写真はクラウンを装着する直前の支台歯と歯肉の関係です。
クラウン修復する歯を削る作業を【支台歯形成】と言います。
この支台歯にも歴然たる【形態の規則】があります。
この規則を歯科大学では徹底的に教育しているのですが。
ただ、手先の器用・不器用が決め手になるのも、歯科医学の悲しい現実でもあります。
右の写真は、同じ歯の支台歯に仮歯を装着し、マージンと仮歯、歯肉との位置関係を示しています。
私がクラウン修復を行うに際して、歯周ポケットを徹底的に除去します。プローブという歯周ポケット測定器での測定値は、ほぼ1ミリにコントロールしてからクラウン修復の歯型を採るのが常です。それは治療が終了してからの期間の方が断然に長いからです。
クラウン修復の周囲のポケットが浅い方が断然、衛生的ですからね。ブラッシングの際も、容易にプラークが除去できますね。

筆者の支台歯模型

私が30歳前半の頃の支台歯形成模型です。とにかくマージン部分の封鎖を完全化するために、涙ぐましい努力をしていたものでした。

セラミッククラウンの一製作過程

同じ模型でセラミック・クラウンを製作する過程です。
この症例では、金箔を巻きつけてますね。
クラウンは歯科用セメントを使って支台歯に合着されます。そのセメントの厚みが薄い方がピッタリと精密に製作されている訳ですから、私は必死でしたね。

マージン部の適合獲得のための一過程

マージン部分の擦り合わせ作業です。
虫歯の細菌がクラウンの下に潜り込まないように、それはそれはもう・用心したものでした。

修復物のマージン部適合の実際

ゴールド膜を実際の支台歯に試適した写真です。
先の鋭利な針で、隈なくチェック!眼を閉じて・確認していました。手先に段差を感じたら・アウト!
歯科修復物の精度って・このくらいシビアでないと、2次う蝕の温床となるんですよ。

完成したセラミック修復と口腔内の歯肉との調和

模型上で完成したセラミック・クラウンと口腔内でのマージン所見です。
歯肉は、本来なら受け入れない【異物】であるセラミック・クラウンと共存していますね。

40代男性の初診時口腔内

私は大学院で歯科保存学を専攻しました。
今までご覧頂きました症例は、全て歯科補綴学の範疇に入る治療です。
インプラントの手術は口腔外科の分野でしょう。
しかし私の歯科臨床は全て・歯科保存学的見地から成り立っています。
それが私の自己主張でもあります。
総入れ歯治療こそ・歯科補綴学の集大成と言っても過言ではないでしょうか。
痛くて噛めなければ、患者さんは入れ歯をしてくれません。
ガタガタ動く入れ歯も、患者さんは使ってはくれません。
見た目も、発音も、患者さんが不満を持てば、入れ歯を入れてはくれません。
写真は、入れ歯造って欲しいという申し出でお越しになった患者さんの口腔です。
ねっ!入れ歯は有るのに、新しい入れ歯を求めていらっしゃる。

筆者の考える総入れ歯

新しく新調させて頂いた【総入れ歯】です。
私の診断、治療技術の集大成です。
歯科補綴学専攻ではなく、歯科保存学専攻の歯学博士である私の、歯科補綴学への挑戦の集大成です。
入れ歯にすると【骨や歯茎が痩せる】という歯科医師が大勢います。
私の入れ歯は10年、20年、同じモノを皆さんがお使い続けていらっしゃいます。
入れ歯は決して【消耗品】ではありません。
患者さんの【人工臓器】として、お役にたつ立派な治療です。
最近、母校の附属病院の総合診療科に配属されました。
入れ歯に関心を持つ後進たちが、興味津々で私の・入れ歯治療に参加して下さいます。
当初の興味津々から、今ではワクワク気分な表情に変化している様を・嬉しく眺めています。入れ歯造りに際して、私が口すっぱく言う台詞が在ります。
粘膜を掌で【白桃】を包み込むような気持ちでなっ!

自然感ある綺麗な入れ歯であっても、直ぐに外れては・意味がありません。
写真の中心部の英語文字をクリックして下さい。
歯科治療が患者さんの幸福のためにある事を・是非に実感して欲しいのです。

筆者の総入れ歯の製作の一過程

私の総入れ歯治療も、歯の治療と基本的に・同じ考え方で進めます。
先ずは、仮の総入れ歯を造って、どうして今までの入れ歯では使い物に・ならなかったのか?と、原因究明を行います。で、その間違いを修正しながら、【核心】に迫ってゆきます。
白く写っている材料は、1週間程度を要して硬化する素材です。
柔らかいですから、粘膜に傷つきません。
加えて、下の奥歯は平らです。痛くない入れ歯で噛み合わせのバランスが良ければ、それなりに噛もうとして偏位していた顎が、楽な本来の正しい位置に戻ってきます。
疲れ果てた企業戦士が、心休まる我が家へと帰るのと・全く同じなんですよ。

インプラント修復物の内部基礎構造

下顎の治療はインプラント治療を選択しました。
この方は当時40歳を少しばかり過ぎた方でしたのと、スポーツをする方でしたので、もう暫くは、噛む瞬発力を必要とされておられましたので。
インプラント修復の土台です。鉄筋コンクリート製の建築物の内部構造のような金属の基礎部分です。

上顎総入れ歯_下顎全インプラント修復_技工の一過程

上はワックスにて製作過程にある総入れ歯。
下がインプラント修復の基礎部分。

口腔内での試適

口腔内での試適状態。
真っ直ぐで・スムーズな・噛み合わせ平面に注目してください。

口腔内での試適

上の顎の粘膜の性状です。
左側は、初診時。
右側は、最終歯型を採る直前です。
粘膜がピーンと張っていることが・お判りかと思います。
幼い頃の年末の大掃除。障子の張替えが私の担当でした。障子紙に霧吹きの水を噴霧した瞬間、ピーンと張った障子紙。
コレが私の総入れ歯造りのヒントになったのですよ。

患者さんの粘膜性状

上顎は総入れ歯にて修復治療を、下顎はインプラント修復にて。
上顎にインプラントを何故に選択しなかったのかって?
必要ないと私が、診断したからです。
生体内に移植する異物は、できるだけ最小とすることというのは医学の基本ですから。

レントゲン所見です。
術後20年、あっという間に過ぎてしまいました。

むし歯の治療とラバーダム防湿_う蝕検知液
当院における虫歯治療の実際
ダイレクトボンディング修復の実際

虫歯の治療については・できるだけ健康な歯質を残すことが大切であることは言うまでもありません。
しかし最も大切なことがあります。
う蝕検知液の使用です。虫歯を取り残しては、その後の治療は全くの無駄になりますから。う蝕検知液の使用にて罹患歯質は徹底的に取り除くことは・当たり前の治療行為です。その上で、健康な歯質の保全に努める。これが本筋だと思います。
次いでこれもまた歯科治療において最も大切な手順。ラバーダム防湿法の徹底です。ラバーダム防湿なくして・保存治療は成り立ちません。切削により露出した健康な歯質を【唾液による汚染】から徹底的に排除しなければ、感染防止の原則に反します。
汚染歯質の上に被せたり、詰めたり、何の意味があるでしょう。

ラバーダム防湿下での根管治療の実際

根管治療も保存治療の1分野です。根管の中に唾液の侵入を防ぐことは、根管治療の技術がどうだ・こうだと論じる以前の基礎の基礎です。無菌的治療が根管治療の大原則ですから。最近では多くの根管治療の機材、が各メーカーから紹介されています。しかし機械は、あくまでも治療の一助でしかありません。治療の原理・原則は変えてはならない【掟】なのです。したがって虫歯治療、根管治療などの保存治療に際しては、ラバーダム防湿法をしないのならば・しないほうがマシだと・私は警告します。できる歯科医師に依頼すべきでしょう。

他院にてセラミックインレーの施術を受けた20代女性の
セラミックインレーを取り外しラバーダム防湿下でう蝕を完全に除った状態
ダイレクトボンディング法にて再修復

虫歯治療においては、私はダイレクトボンディング修復を積極的に活用しています。
歯科保存学の原理・原則に適った治療方法だからです。
歯質と修復材料の接着操作の際には、呼気などの湿気は接着阻害因子になります。唾液などは、以ての外です。ですからラバーダム防湿法の環境下で作業を行います。
ダイレクトボンディング修復の際には、歯科技工士に歯の製作を頼ることが・できません。
口腔内で、歯科医師自身の技術で、直接・歯の製作をしなければなりませんから。
謂わば、歯科医師自身の手先の器用さと・センスがモノを言います。
ですから私はダイレクトボンディング修復が好きです。
ダイレクトボンディング修復の実際をご覧ください。
提示する症例の治療の原因は虫歯です。
修復治療を受けた歯の再治療です。
もちろん私の施術した歯では・ありません。
最初の症例は、治療を受けてから1年も経過していない歯です。
歯の色の素材・セラミックの詰め物がレジンセメントにて合着されています。
あえて接着と表現しません。なぜなら正しい接着操作が為されていないことが、一目瞭然だからです。
セラミック修復物の形態に注目してください。
元来の歯の解剖学的形態など・無関心なのでしょうか?
大きな隙間、大きな出っ張り。
割れて当然だと思います。
最近流行りの【光学カメラ印象】で撮影した画像を基に、コンピューター操作の削り出しマシーンで造ったセラミック修復物です。新しい治療方法が本当に優れているのでしょうか?
最近の私は、AIに負けてたまるか!
人間の存在価値を懸けて、手先を動かしています。

50代女性の口腔内_小臼歯は、当院にてセラミック修復、第1大臼歯は、当院にてダイレクトボンディング修復、第2大臼歯は、他院にて治療
う蝕検知液の使用を徹底する
ダイレクトボンディング修復の一過程
ダイレクトボンディング修復の一過
ダイレクトボンディング修復の完成

2つ目の症例は、金属による修復治療の再治療です。
私は金属を使った修復治療の肯定派です。
しかし正しい症例の適応と、正しい治療手技を厳守してこそです。

破折したコンポジット・レジン・インレー修復
筆者のダイレクトボンディングによる再修復

3つ目の症例は、コンポジットレジン・インレー修復の再治療です。
教科書的な基本的手順に則った治療でなければ、不幸な結末に至ります。

歯根破折の一症例(赤矢印)及び不適合な修復物
筆者の根管治療の実際
筆者の根管治療の実際

最近の初診の患者さんの傾向として、【歯根破折】の症例を頻繁に見かけることが、気がかりになりました。歯根破折は【無髄歯】と呼ばれる【神経を採った歯】に生じることが多いです。ですから本来は神経を残す治療に専念すべきでしょう。ただ一般的な治療ではありませんので、ここでは詳細を語れる段階まで普遍的治療にはなっていません。
詳しくはご相談下さい。
神経を採る治療は、炎症歯髄を除去する抜髄処置と、壊死・感染歯髄を除去する感染根管治療に分類されます。根管に貼薬する薬の処方の違いこそあるものの、基本的操作は同じです。
最近の傾向としての機械化による効率的な根管の拡大処置は、私はお勧めしません。繊細な根管の手当てであるからこそ、歯科医師の【指頭感覚】を鍛えてこそ、成功の第1歩だと・確信しています。機械により大きく拡大され過ぎた根管は折れやすくなります。
私の根管治療は、若い歯科医師からすれば・面白味に欠けるように見えるでしょう。ラバーダム防湿下で、手用のファイルを1に根気・2に根気・3、4なくして5に根気で、繊細かつ丹念に操作する。根管充填も90パーセントはガッタパーチャ・ポイントとキャナルスをシーラーとして使用しています。
最近話題のMTAセメントについて。適材適所だと考えていますが、明言できること。MTAセメントは魔法の薬ではありません。
また、ごくごく稀に・お問い合わせを受けるドックベストセメント。私の臨床では、仮にメーカーから頂いたら返却するか・ゴミ箱へ直行することは・間違いないでしょう。学問的な決着済みと結論を出しています。
私の根管治療はオーソドックスなものです。ペンシルベニア大学のドクター・グロスマン、シアトルのドクター・イングル、そして日本歯科大学新潟歯学部歯科保存学教室第1講座・初代教授であった川崎孝一先生の根管治療を頑なに守りつつ、そこにマイクロスコープなり時代の推移から私の眼鏡に適った機材なりテクニックを加味しています。

筆者のファイバーポストの治療の一過程

また根管治療のあとの手順として行う支台築造。ファイバー・ポストの使用が主流になりました。これもまた接着操作が必要です。ラバーダム防湿方法を行うことが大切です。ファイバー・ポストが根管に挿入されていても、接着に不備があれば・無意味ですから。

バイオロジック・ウィドゥス獲得のための歯周外科予知性のある修復治療が可能となる
残根状態の小臼歯
臨床歯冠延長手術により歯質が大きく露出した
現在矯正治療による動的治療中_矯正力に耐えられるだけの丈夫な支台歯が形成された

加えて歯肉から露出した歯質の量の違いも、歯根破折を生じさせる原因となります。積極的な歯周外科治療の採用による露出歯質の増大をはかり、クラウン修復が支台歯を大きく広く包み込むことで、歯根破折を防止できるのです。

咀嚼障害と審美障害を主訴に来院した40代男性

日本歯科大学構内のヒポクラテスの樹

筆者のファイバーポストの治療の一過程

レイモンド・キム先生 直筆の書

私の診療に対する考え方を、長々と【ひとり語り】させていただきました。
しかし最後に、どうしてもお伝えしたいことが・あります。
私たち医療人は【ヒポクラテスの誓い】に宣誓した医療専門職です。
また、私は男性ですから女性にはなれません。しかし【ナイチンゲールの心】を、常に頭の・ど真ん中に留めて・器具を手にしています。
私の診療室の診療台から、常に視界に入る処に1枚の額縁が・壁に掛かっています。
【歯科医療は愛の仕事である】という意味の【Dentistry is a Work of Love】と認められています。【少年よ・大志を抱け】という台詞で有名な札幌農学校のクラーク博士の高弟のひとりである内村鑑三氏の認めた言葉です。氏は日本における聖書の普及に尽力した方です。
人の大切な身体を与る・責任ある仕事の重圧は、凄まじいものです。人を好きだからこそ、その重圧を喜びと感じられるのだと思います。
青年期に私が大きな影響を受けた歯科医師であるレイモンド・キム先生が、この内村鑑三氏の言葉を先生なりに訳して、自ら日本語に挑んで、毛筆で認めた文章。
これらが私の歯科医師として過ごしてきた際のエネルギー源であったことを、正直に告白しながら、この項を閉じさせて頂きます。
私は歯科治療を素晴らしい仕事だと・思っています。
好きな歯に囲まれて過ごす人生に感謝しています。
その感謝の気持ちから、患者さんにとって【絶対的な安定感ある歯科医師】であるために、どんな辛苦にも耐える積もりです。
【孤高のメス】という映画のワン・シーンでの主人公の台詞。
医師で在り続けることは・医師になるよりも難しい。